人類進化の700万年 (講談社現代新書)
人類進化の700万年 (講談社現代新書)
著者:三井 誠

概要:
四万~三万年前のヨーロッパ。ネアンデルタール人と現生人類のクロマニョン人が共存していたらしい。両者の交流を示唆する痕跡が、フランスなどに残されていた。知能に勝るクロマニョン人が作った石器と同じくらい工夫を凝らした石器(石刃)が、ネアンデルタール人の三万数千年前の化石とともに見つかっている。最新の研究で明らかになってきた私たちのルーツの新常識。(アマゾン商品紹介より)

ネアンデルタール人と現生人類の交流?


上記のように、ネアンデルタール人と現生人類の交流があり、その際に現生人類から石器の作り方を教えてもらったり、真似したのではないかと考えられているそうだが、その可能性は低いようだとも本書では指摘している。

1997年にドイツなどの研究チームが、約四万~三万年前と推定されるネアンデルタール人の化石からミトコンドリアの遺伝情報を読み取ることに成功し、現生人類と比較したところ、ネアンデルタール人は現生人類にはない遺伝的な特徴を多く持っていたことを突き止めたそうだ。つまり、ネアンデルタール人は、現生人類と遺伝的にはずいぶん離れた所にあり、ネアンデルタール人が現生人類に進化したわけでもなければ、混血もなかったことになるらしい。

しかしその後、2010年に我々現代人のほとんどはネアンデルタール人由来のDNAを受け継いでいるらしく、それは遺伝子構造のすくなくとも1%~4%になる、という研究結果も発表されている。

ニュース - 古代の世界 - ネアンデルタール人、現生人類と交配 - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)

英語では、「時代遅れの人」や「野蛮な人」をさして「ネアンデルタール」みたいとも言われることがあるらしく、そのようなイメージを長らく抱かれていたが、1950年代に来たイラクのシャニダール洞窟で発掘された大人の化石はそこに一石を投じることとなる。
その化石は、生まれつき右腕が萎縮する病気にかかっていたことを示していた。研究者は、右腕が不自由なまま比較的高齢(三十五~四十歳)まで生きていられたのは、仲間に助けてもらったからだと考えた。
そこには助け合い、介護の始まりが見て取れたのだ。

個人的にはこのような大昔の人々の、現代人にも通ずる「人間らしさ」を伺わせるエピソードが印象に残った。

歯なし原人


ネアンデルタール人よりはるか昔、約百八十万年前と推定されている頭骨の化石(グルジアから発掘された)には、下あごの左の犬歯の他はすべて抜け落ちてしまった跡があったという。抜け跡のくぼみに歯が再生していたので、少なくとも骨が再生する間は生きていたことになる。
まるで老人にフガフガしていたのではないかとw(死亡推定年齢は四十歳前後)思われるが、それでも厳しい自然の中、そこまで生きていられたのは動物の骨髄など柔らかい食べ物を仲間に分けてもらい、命をつなぐことができたのではないか、と考えられている。
ここにも介護の精神(精神という概念があったのかどうかわからないが)が見て取れる。

最古の現生人類


アフリカ・エチオピアで発見された、約十六万年前の大人2人と子どもの頭骨は、現生人類よりもやや大きめの1450ccの脳をもっていたらしいが、ここにも現代人らしい心が芽生えた可能性もあった。
見つかった子どもの頭骨には、磨かれたような跡があったという。死後に頭骨を保存して、繰り返し手で触れていたらしい。死者を慈しむ感情が彼らにもあったのではないか。

ちなみに近所のパチンコ屋の前に招き猫の銅像があるのだが、頭がツルツルになっている。もちろん客がゲン担ぎにその頭を触っていくからだ。うん、全く関係ないです。

アフリカ大陸から宇宙まで


この分野はまだまだ謎も多いので、今までの定説を覆すような発見や研究結果がこれからも出てくるだろう。
我々はどこから来てどこへ行くのか───これは人間に取って永遠のテーマともいえるかもしれないが、その好奇心・探究心が人類をまた前へと進ませるのだろう。

歯なし原人も、フガフガいいながら仲間とともにアフリカ大陸を出て、はるか西アジアのグルジアまで旅を続けてきたのだろうか(グルジア付近で生まれ育ったのかもしれないが)
このころの原人の脳は600ccに過ぎず、初期原人の610ccにすら及ばないらしい。だから「脳が大きくなりエネルギーが必要になって肉食に頼ることが多くなった→そして脳も体も現生人類に近くなり、石器を使いこなせるようになった→だからアフリカ大陸を出ました!」というカッコいいものでもないらしい。
なんとな~くブラブラして「もっと遠くへ行ってみっか~」ぐらいの気持ちで旅を続けていたら「グルジアに来ました←New!」なのかもしれない。

となると、二十一世紀に生きる我々はどこへ向かうのだろうか。「ちょっと宇宙でも行ってみっか~」と地球を飛び出して旅する日も近いのかな?


人類進化の700万年 (講談社現代新書)
目次:
まえがき
第1章 人類のあけぼの
第2章 人間らしさへの道
第3章 人類進化の最終章
第4章 日本列島の人類史
第5章 年代測定とは
第6章 遺伝子から探る
終章
あとがき